所有者不明土地の利用の円滑化等に関する特別措置法

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平成三十年法律第四十九号

所有者不明土地の利用の円滑化等に関する特別措置法

第一章 総則

(目的) 第一条 この法律は、社会経済情勢の変化に伴い所有者不明土地が増加していることに鑑み、所有者不明土地の利用の円滑化及び土地の所有者の効果的な探索を図るため、国土交通大臣及び法務大臣による基本方針の策定について定めるとともに、地域福利増進事業の実施のための措置、所有者不明土地の収用又は使用に関する土地収用法(昭和二十六年法律第二百十九号)の特例、土地の所有者等に関する情報の利用及び提供その他の特別の措置を講じ、もって国土の適正かつ合理的な利用に寄与することを目的とする。 (定義) 第二条 この法律において「所有者不明土地」とは、相当な努力が払われたと認められるものとして政令で定める方法により探索を行ってもなおその所有者の全部又は一部を確知することができない一筆の土地をいう。 2 この法律において「特定所有者不明土地」とは、所有者不明土地のうち、現に建築物(物置その他の政令で定める簡易な構造の建築物で政令で定める規模未満のもの(以下「簡易建築物」という。)を除く。)が存せず、かつ、業務の用その他の特別の用途に供されていない土地をいう。 3 この法律において「地域福利増進事業」とは、次に掲げる事業であって、地域住民その他の者の共同の福祉又は利便の増進を図るために行われるものをいう。 一 道路法(昭和二十七年法律第百八十号)による道路、駐車場法(昭和三十二年法律第百六号)による路外駐車場その他一般交通の用に供する施設の整備に関する事業 二 学校教育法(昭和二十二年法律第二十六号)による学校又はこれに準ずるその他の教育のための施設の整備に関する事業 三 社会教育法(昭和二十四年法律第二百七号)による公民館(同法第四十二条に規定する公民館に類似する施設を含む。)又は図書館法(昭和二十五年法律第百十八号)による図書館(同法第二十九条に規定する図書館と同種の施設を含む。)の整備に関する事業 四 社会福祉法(昭和二十六年法律第四十五号)による社会福祉事業の用に供する施設の整備に関する事業 五 病院、療養所、診療所又は助産所の整備に関する事業 六 公園、緑地、広場又は運動場の整備に関する事業 七 住宅(被災者の居住の用に供するものに限る。)の整備に関する事業であって、災害(発生した日から起算して三年を経過していないものに限る。次号イにおいて同じ。)に際し災害救助法(昭和二十二年法律第百十八号)が適用された同法第二条に規定する市町村の区域内において行われるもの 八 購買施設、教養文化施設その他の施設で地域住民その他の者の共同の福祉又は利便の増進に資するものとして政令で定めるものの整備に関する事業であって、次に掲げる区域内において行われるもの イ 災害に際し災害救助法が適用された同法第二条に規定する市町村の区域 ロ その周辺の地域において当該施設と同種の施設が著しく不足している区域 九 前各号に掲げる事業のほか、土地収用法第三条各号に掲げるもののうち地域住民その他の者の共同の福祉又は利便の増進に資するものとして政令で定めるものの整備に関する事業 十 前各号に掲げる事業のために欠くことができない通路、材料置場その他の施設の整備に関する事業 4 この法律において「特定登記未了土地」とは、所有権の登記名義人の死亡後に相続登記等(相続による所有権の移転の登記その他の所有権の登記をいう。以下同じ。)がされていない土地であって、土地収用法第三条各号に掲げるものに関する事業(第二十七条第一項及び第三十九条第一項において「収用適格事業」という。)を実施しようとする区域の適切な選定その他の公共の利益となる事業の円滑な遂行を図るため当該土地の所有権の登記名義人となり得る者を探索する必要があるものをいう。 第二章 基本方針等 (基本方針) 第三条 国土交通大臣及び法務大臣は、所有者不明土地の利用の円滑化及び土地の所有者の効果的な探索(以下「所有者不明土地の利用の円滑化等」という。)に関する基本的な方針(以下「基本方針」という。)を定めなければならない。 2 基本方針においては、次に掲げる事項を定めるものとする。 一 所有者不明土地の利用の円滑化等の意義及び基本的な方向 二 所有者不明土地の利用の円滑化等のための施策に関する基本的な事項 三 特定所有者不明土地を使用する地域福利増進事業に関する基本的な事項 四 特定登記未了土地の相続登記等の促進に関する基本的な事項 五 前各号に掲げるもののほか、所有者不明土地の利用の円滑化等に関する重要事項 3 国土交通大臣及び法務大臣は、基本方針を定めようとするときは、関係行政機関の長に協議しなければならない。 4 国土交通大臣及び法務大臣は、基本方針を定めたときは、遅滞なく、これを公表しなければならない。 5 前二項の規定は、基本方針の変更について準用する。 (国の責務) 第四条 国は、所有者不明土地の利用の円滑化等に関する施策を総合的に策定し、及び実施する責務を有する。 2 国は、地方公共団体その他の者が行う所有者不明土地の利用の円滑化等に関する取組のために必要となる情報の収集及び提供その他の支援を行うよう努めなければならない。 3 国は、広報活動、啓発活動その他の活動を通じて、所有者不明土地の利用の円滑化等に関し、国民の理解を深めるよう努めなければならない。 (地方公共団体の責務) 第五条 地方公共団体は、所有者不明土地の利用の円滑化等に関し、国との適切な役割分担を踏まえて、その地方公共団体の区域の実情に応じた施策を策定し、及び実施する責務を有する。 第三章 所有者不明土地の利用の円滑化のための特別の措置 第三節 不在者の財産及び相続財産の管理に関する民法の特例 第三十八条 国の行政機関の長又は地方公共団体の長(次条第五項において「国の行政機関の長等」という。)は、所有者不明土地につき、その適切な管理のため特に必要があると認めるときは、家庭裁判所に対し、民法(明治二十九年法律第八十九号)第二十五条第一項の規定による命令又は同法第九百五十二条第一項の規定による相続財産の管理人の選任の請求をすることができる。 第四章 土地の所有者の効果的な探索のための特別の措置 第一節 土地所有者等関連情報の利用及び提供 第三十九条 都道府県知事及び市町村長は、地域福利増進事業、収用適格事業又は都市計画事業(以下「地域福利増進事業等」という。)の実施の準備のため当該地域福利増進事業等を実施しようとする区域内の土地の土地所有者等(土地又は当該土地にある物件に関し所有権その他の権利を有する者をいう。以下同じ。)を知る必要があるときは、当該土地所有者等の探索に必要な限度で、その保有する土地所有者等関連情報(土地所有者等と思料される者に関する情報のうちその者の氏名又は名称、住所その他国土交通省令で定めるものをいう。以下この条において同じ。)を、その保有に当たって特定された利用の目的以外の目的のために内部で利用することができる。 2 都道府県知事及び市町村長は、地域福利増進事業等を実施しようとする者からその準備のため当該地域福利増進事業等を実施しようとする区域内の土地の土地所有者等を知る必要があるとして土地所有者等関連情報の提供の求めがあったときは、当該土地所有者等の探索に必要な限度で、当該地域福利増進事業等を実施しようとする者に対し、土地所有者等関連情報を提供するものとする。 3 前項の場合において、都道府県知事及び市町村長は、国及び地方公共団体以外の者に対し土地所有者等関連情報を提供しようとするときは、あらかじめ、当該土地所有者等関連情報を提供することについて本人(当該土地所有者等関連情報によって識別される特定の個人をいう。)の同意を得なければならない。ただし、当該都道府県又は市町村の条例に特別の定めがあるときは、この限りでない。 4 前項の同意は、その所在が判明している者に対して求めれば足りる。 5 国の行政機関の長等は、地域福利増進事業等の実施の準備のため当該地域福利増進事業等を実施しようとする区域内の土地の土地所有者等を知る必要があるときは、当該土地所有者等の探索に必要な限度で、当該土地に工作物を設置している者その他の者に対し、土地所有者等関連情報の提供を求めることができる。 第二節 特定登記未了土地の相続登記等に関する不動産登記法の特例 第四十条 登記官は、起業者その他の公共の利益となる事業を実施しようとする者からの求めに応じ、当該事業を実施しようとする区域内の土地につきその所有権の登記名義人に係る死亡の事実の有無を調査した場合において、当該土地が特定登記未了土地に該当し、かつ、当該土地につきその所有権の登記名義人の死亡後十年以上三十年以内において政令で定める期間を超えて相続登記等がされていないと認めるときは、当該土地の所有権の登記名義人となり得る者を探索した上、職権で、所有権の登記名義人の死亡後長期間にわたり相続登記等がされていない土地である旨その他当該探索の結果を確認するために必要な事項として法務省令で定めるものをその所有権の登記に付記することができる。 2 登記官は、前項の規定による探索により当該土地の所有権の登記名義人となり得る者を知ったときは、その者に対し、当該土地についての相続登記等の申請を勧告することができる。この場合において、登記官は、相当でないと認めるときを除き、相続登記等を申請するために必要な情報を併せて通知するものとする。 3 登記官は、前二項の規定の施行に必要な限度で、関係地方公共団体の長その他の者に対し、第一項の土地の所有権の登記名義人に係る死亡の事実その他当該土地の所有権の登記名義人となり得る者に関する情報の提供を求めることができる。 4 前三項に定めるもののほか、第一項の規定による所有権の登記にする付記についての登記簿及び登記記録の記録方法その他の登記の事務並びに第二項の規定による勧告及び通知に関し必要な事項は、法務省令で定める。 第五章 雑則 (職員の派遣の要請) 第四十一条 地方公共団体の長は、地域福利増進事業等の実施の準備のためその職員に土地所有者等の探索に関する専門的な知識を習得させる必要があるときは、国土交通省令で定めるところにより、国土交通大臣に対し、国土交通省の職員の派遣を要請することができる。 (職員の派遣の配慮) 第四十二条 国土交通大臣は、前条の規定による要請があったときは、その所掌事務又は業務の遂行に著しい支障のない限り、適任と認める職員を派遣するよう努めるものとする。 (地方公共団体の援助) 第四十三条 地方公共団体は、地域福利増進事業を実施しようとする者その他の所有者不明土地を使用しようとする者の求めに応じ、所有者不明土地の使用の方法に関する提案、所有者不明土地の境界を明らかにするための措置に関する助言、土地の権利関係又は評価について特別の知識経験を有する者のあっせんその他の援助を行うよう努めるものとする。 (権限の委任) 第四十五条 この法律に規定する国土交通大臣の権限は、国土交通省令で定めるところにより、その一部を地方整備局長又は北海道開発局長に委任することができる。 (省令への委任) 第四十七条 この法律に定めるもののほか、この法律の実施のため必要な事項は、国土交通省令又は法務省令で定める。 (経過措置) 第四十八条 この法律に基づき命令を制定し、又は改廃する場合においては、その命令で、その制定又は改廃に伴い合理的に必要と判断される範囲内において、所要の経過措置(罰則に関する経過措置を含む。)を定めることができる。 附 則 抄 (施行期日) 1 この法律は、公布の日から起算して六月を超えない範囲内において政令で定める日から施行する。ただし、第三章第一節及び第二節、第四十四条、第四十六条並びに第六章並びに附則第三項の規定は、公布の日から起算して一年を超えない範囲内において政令で定める日から施行する。 (検討) 2 政府は、この法律の施行後三年を経過した場合において、この法律の施行の状況について検討を加え、必要があると認めるときは、その結果に基づいて必要な措置を講ずるものとする。