「所有者不明土地の利用の円滑化等に関する特別措置法等の施行に伴う不動産登記事務の取扱いについて(平成30年11月15日付け法務省民二第612号民事局長通達)」の版間の差分
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2018年11月24日 (土) 11:56時点における版
法務省民二第612号
平成30年11月15日
法務局長 殿
地方法務局長 殿
法務省民事局長
( 公 印 省 略 )
所有者不明土地の利用の円滑化等に関する特別措置法等の施行に伴う不動産登記事務の取扱いについて(通達)
所有者不明土地の利用の円滑化等に関する特別措置法(平成30年法律第49号。以下「特措法」という。),所有者不明土地の利用の円滑化等に関する特別措置法施行令(平成30年政令第308号。以下「施行令」という。)及び所有者不明土地の利用の円滑化等に関する特別措置法に規定する不動産登記法の特例に関する省令(平成30年法務省令第28号。以下「省令」という。)が本日から施行されますが,これらに伴う不動産登記事務の取扱いについては,下記の点に留意し,事務処理に遺憾のないよう,貴管下登記官に周知方お取り計らい願います。
なお,本通達中,「不登法」とあるのは不動産登記法(平成16年法律第123号)を,「不登規則」とあるのは不動産登記規則(平成17年法務省令第18号)をそれぞれいいます。
記
目次
第1 特定登記未了土地の相続登記等に関する不動産登記法の特例
1 特定登記未了土地の意義
特定登記未了土地の相続登記等(相続による所有権の移転の登記その他の所有権の登記をいう。以下同じ。)に関する不動産登記法の特例が対象とする特定登記未了土地とは,所有権の登記名義人の死亡後に相続登記等がされていない土地であって,土地収用法(昭和26年法律第219号)第3条各号に掲げるものに関する事業を実施しようとする区域の適切な選定その他の公共の利益となる事業の円滑な遂行を図るため当該土地の所有権の登記名義人となり得る者を探索する必要があるものとされた(特措法第2条第4項)。
2 所有権の登記への付記
(1)登記官は,起業者(土地収用法第8条第1項に規定する起業者をいう。)その他の公共の利益となる事業を実施しようとする者からの求めに応じ,当該事業を実施しようとする区域内の土地(以下「対象土地」という。)につきその所有権の登記名義人に係る死亡の事実の有無を調査した場合において,対象土地が特定登記未了土地に該当し,かつ,対象土地につきその所有権の登記名義人の死亡後10年以上30年以内において政令で定める期間を超えて相続登記等がされていないと認めるときは,対象土地の所有権の登記名義人となり得る者を探索した上,職権で,所有権の登記名義人の死亡後長期間にわたり相続登記等がされていない土地である旨その他当該探索の結果を確認するために必要な事項として法務省令で定めるものをその所有権の登記に付記することができるものとされた(特措法第40条第1項)。
(2)(1)の政令で定める期間は,30年とされた(施行令第10条)。
(3)特措法第40条第1項の事項の登記は,付記登記によってするものとされた(省令第2条)。
付記登記のほか,特措法に基づく登記に関する手続には,省令が定める以外の事項については,不登規則が適用される。
(4)登記官は,職権で特措法第40条第1項の事項の登記をしようとするときは,職権付記登記事件簿に登記の目的,立件の年月日及び立件の際に付した番号(以下「立件番号」という。)並びに不動産所在事項を記録するものとされた(省令第3条第1項)。
(5)(1)の法務省令で定める事項は,第2の2(5)の相続人の全部又は一部が判明しないときは,その旨及び同(6)の作成番号とされた(省令第3条第2項)。
(6)登記官は,長期相続登記等未了土地(特措法第2条第4項の特定登記未了土地に該当し,かつ,当該土地の所有権の登記名義人の死亡後30年間を超えて相続登記等がされていない土地をいう。以下同じ。)に特措法第40条第1項の事項の登記をする際は,別記第1号様式により立件するものとし,当該別記第1号様式に,不動産登記事務取扱手続準則(平成17年2月25日付け法務省民二第456号法務省民事局長通達)別記第60号様式及び別記第61号様式又はこれらに準ずる様式による印判を押印して,省令第3条第1項の立件の年月日及び立件番号を記載し,立件,調査,記入,校合をした場合には,その都度該当欄に取扱者が押印するものとする。
登記官は,特措法第40条第1項の事項の登記を変更をする際は,別記第2号様式により立件するものとし,当該別記第2号様式に上記と同様の押印等をするものとする。
(7)特措法第40条第1項の事項の登記の記録例は,別紙1のとおりとする。
3 相続登記等の申請の勧告等
(1)登記官は,2(1)の探索により長期相続登記等未了土地の所有権の登記名義人となり得る者を知ったときは,その者に対し,長期相続登記等未了土地についての相続登記等の申請を勧告することができるものとされた(特措法第40条第2項前段)。
当該勧告は,次に掲げる事項を明らかにしてするものとされた(省令第4条第1項各号)。
ア 長期相続登記等未了土地に係る不動産所在事項及び不動産番号
イ 所有権の登記名義人となり得る者
(2)上記(1)の場合において,登記官は,相当でないと認めるときを除き,相続登記等を申請するために必要な情報を併せて通知するものとされた(特措法第40条第2項後段)。
当該通知は,次に掲げる事項を明らかにしてするものとされた(省令第4条第2項各号)。
ア 長期相続登記等未了土地の所在地を管轄する登記所
イ 登記の申請に必要な情報
具体的には,申請窓口に係る情報や申請情報の内容とすべき事項などがこれに該当する。
4 情報提供の要請
登記官は,上記2及び3の施行に必要な限度で,関係地方公共団体の長その他の者に対し,対象土地の所有権の登記名義人に係る死亡の事実その他対象土地の所有権の登記名義人となり得る者に関する情報の提供を求めることができるものとされた(特措法第40条第3項)。
第2 法定相続人情報の作成
1 登記官は,第1の2(1)の探索を行った場合には,当該長期相続登記等未了土地の所有権の登記名義人に係る法定相続人情報を作成するものとされた(省令第1条第1項)。
2 法定相続人情報には,次に掲げる事項を記録するものとされた(省令第1条第2項各号)。法定相続人情報の記録例は,別紙2又はこれに準ずるものとする。
(1)被相続人である所有権の登記名義人の氏名,出生の年月日,最後の住所,登記簿上の住所及び本籍並びに死亡の年月日
なお,被相続人の最後の住所が判明しないときは,当該住所を記録することは要しないものとする。
(2)上記(1)の登記名義人の相続人(被相続人又はその相続人の戸籍及び除かれた戸籍の謄本又は全部事項証明書により確認することができる相続人となり得る者をいう。以下第2の2において同じ。)の氏名,出生の年月日,住所及び当該登記名義人との続柄(当該相続人が死亡しているときにあっては,氏名,出生の年月日,当該登記名義人との続柄及び死亡の年月日)
なお,相続人の住所を記録することができないときは,当該住所の記録を要しないものとする。
(3)上記(1)の登記名義人の相続人(以下「第一次相続人」という。)が死亡している場合には,第一次相続人の相続人(以下「第二次相続人」という。)の氏名,出生の年月日,住所及び第一次相続人との続柄(当該第二次相続人が死亡しているときにあっては,氏名,出生の年月日,当該第一次相続人との続柄及び死亡の年月日)
なお,第二次相続人の住所を記録することができないときは,当該住所の記録を要しないものとする。
(4)第二次相続人が死亡しているときは,第二次相続人を第一次相続人と,第二次相続人を第一次相続人の相続人とみなして,上記(3)を適用するものとされた。当該相続人(その相続人を含む。)が死亡しているときも,同様とするものとされた。
(5)相続人の全部又は一部が判明しないときは,その旨
(6)作成番号
作成番号は,12桁の番号とし,登記所ごとに法定相続人情報を作成する順序に従って付すものとされた(省令第1条第3項)。
(7)作成の年月日
作成の年月日は,登記官が法定相続人情報の内容について,上記(1)から(5)までの事項につき,提出された資料から確認した内容と合致していないなどの誤りや遺漏がないことを確認した日を記録するものとする。
3 登記官は,法定相続人情報を電磁的記録で作成し,これを保存するものとされた(省令第1条第4項)。
所有権の登記名義人の相続人又は特措法第40条第1項の申出をした公共の利益となる事業を実施しようとする者から,法定相続人情報の閲覧の請求(不登法第121条第2項)がされた場合には,当該電磁的記録に記録された情報の内容を書面に出力して表示するものとする(不登規則第202条第2項)。
第3 その他
1 登記所には,法定相続人情報つづり込み帳及び職権付記登記事件簿を備えるものとされた(省令第5条第1項)。
法定相続人情報つづり込み帳には,不登規則第19条の規定にかかわらず,関係地方公共団体の長その他の者への照会書の写し,提出された資料,法定相続人情報の内容を書面に出力したもの及び省令第2条の付記登記に関する書類をつづり込むものとされた(省令第5条第2項)。
法定相続人情報つづり込み帳には,上記の書類を作成番号の順序に従ってつづり込むものとする。
2 次に掲げる情報の保存期間は,次のとおりとされた(省令第6条第1項各号)。
(1)法定相続人情報付記登記を抹消した日から30年間
(2)職権付記登記事件簿に記録された情報立件の日から5年間
また,法定相続人情報つづり込み帳の保存期間は,作成の年の翌年から10年間とされた(同条第2項)。
3 登記官は,特措法第40条第1項の事項の登記がされた所有権の登記名義人について所有権の移転の登記をしたとき(これにより当該登記名義人が所有権の登記名義人でなくなった場合に限る。)は,職権で,当該特措法第40条第1項の事項の登記の抹消の登記をするとともに,抹消すべき登記を抹消する記号を記録しなければならないものとされた(省令第7条)。
4 表題部所有者又は登記名義人の相続人が登記の申請をする場合において,当該表題部所有者又は登記名義人に係る法定相続人情報の作成番号(法定相続人情報に相続人の全部又は一部が判明しない旨の記録がないものに限る。)を提供したときは,当該作成番号の提供をもって,相続があったことを証する市町村長(特別区の区長を含むものとし,地方自治法(昭和22年法律第67号)第252条の19第1項の指定都市にあっては,区長又は総合区長とする。以下同じ。)その他の公務員が職務上作成した情報の提供に代えることができるものとされた(省令第8条第1項)。
また,表題部所有者の相続人が所有権の保存の登記の申請をする場合又は登記名義人の相続人が相続による権利の移転の登記の申請をする場合において,法定相続人情報の作成番号(法定相続人情報に当該相続人の住所が記録されている場合に限る。)を提供したときは,当該作成番号の提供をもって,登記名義人となる者の住所を証する市町村長その他の公務員が職務上作成した情報の提供に代えることができるものとされた(同条第2項)。
5 第1の2(1)の特措法第40条第1項の事項の登記をするための作業において,当該登記をすることができないとされた土地の所有権の登記名義人に係る書類は,不動産所在事項及び不動産番号を付した上で,雑書つづり込み帳(不登規則第18条第34号)につづり込むものとする。