「法制審議会民法(相続関係)部会第23回会議資料23-3中間試案後に追加された民法(相続関係)等の改正に関する試案(追加試案)(案)」の版間の差分

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(1 配偶者保護のための方策(持戻し免除の意思表示の推定規定))
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==第2 遺産分割に関する見直し等==
 
==第2 遺産分割に関する見直し等==
===1 配偶者保護のための方策(持戻し免除の意思表示の推定規定)===
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===1 配偶者保護のための方策(持戻し免除の意思表示の推定規定)===
<p>民法第903条に次の規律を付け加えるものとする。</p>
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<p>[http://law.e-gov.go.jp/htmldata/M29/M29HO089.html#1000000000000000000000000000000000000000000000090300000000001000000000000000000 民法第903条]に次の規律を付け加えるものとする。</p>
<p>婚姻期間が20年以上である夫婦の一方が他の一方に対し,その居住の用に供する建物又はその敷地の全部又は一部を遺贈又は贈与したとき(第1・2の規律により長期居住権を遺贈又は贈与した場合を含む。)は,民法第903条第3項の意思表示があったものと推定する。</p>
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<p>婚姻期間が20年以上である夫婦の一方が他の一方に対し,その居住の用に供する建物又はその敷地の全部又は一部を遺贈又は贈与したとき([[#2 配偶者の居住権を長期的に保護するための方策|第1・2]]の規律により長期居住権を遺贈又は贈与した場合を含む。)は,[http://law.e-gov.go.jp/htmldata/M29/M29HO089.html#1000000000000000000000000000000000000000000000090300000000003000000000000000000 民法第903条第3項]の意思表示があったものと推定する。</p>
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===2 仮払い制度等の創設・要件明確化===
 
===2 仮払い制度等の創設・要件明確化===
 
====⑴ 家事事件手続法の保全処分の要件を緩和する方策====
 
====⑴ 家事事件手続法の保全処分の要件を緩和する方策====

2017年7月29日 (土) 03:40時点における版

第2 遺産分割に関する見直し等

1 配偶者保護のための方策(持戻し免除の意思表示の推定規定)

民法第903条に次の規律を付け加えるものとする。

婚姻期間が20年以上である夫婦の一方が他の一方に対し,その居住の用に供する建物又はその敷地の全部又は一部を遺贈又は贈与したとき(第1・2の規律により長期居住権を遺贈又は贈与した場合を含む。)は,民法第903条第3項の意思表示があったものと推定する。

2 仮払い制度等の創設・要件明確化

⑴ 家事事件手続法の保全処分の要件を緩和する方策

家事事件手続法第200条に次の規律を付け加えるものとする。

家庭裁判所は,遺産の分割の審判又は調停の申立てがあった場合において,相続財産に属する債務の弁済,相続人の生活費の支弁その他の事情により遺産に属する預貯金債権を行使する必要があるときは,他の共同相続人の利益を害しない限り,当該申立てをした者又は相手方の申立てにより,遺産に属する特定の預貯金債権の全部又は一部を仮に取得させることができる。

⑵ 家庭裁判所の判断を経ないで,預貯金の払戻しを認める方策

共同相続された預貯金債権の権利行使について,次のような規律を設けるものとする。

各共同相続人は,遺産に属する預貯金債権のうち,その相続開始時の債権額の2割にその相続人の法定相続分を乗じた額(ただし,預貯金債権の債務者ごとに100万円を限度とする。)については,単独でその権利を行使することができる。〔この場合において,当該権利行使をした預貯金債権については,遺産分割の時において遺産としてなお存在するものとみなす。〕

3 一部分割

民法第907条の規律を次のように改めるものする。

⑴ 共同相続人は,被相続人が遺言で禁じた場合を除き,いつでも,その協議で,遺産の全部又は一部の分割をすることができる。

⑵ 遺産の分割について,共同相続人間に協議が調わないとき,又は協議をすることができないときは,各共同相続人は,その全部又は一部の分割を家庭裁判所に請求することができる。ただし,遺産の一部の分割をすることにより,共同相続人の一人又は数人の利益を害するおそれがあるときは,その請求をすることができない。

4 相続開始後の共同相続人による財産処分

共同相続人の一人が,遺産の分割が終了するまでの間に,遺産の全部又は一部を処分した場合の規律として,次のいずれかの規律を設けるものとする。

⑴ 【甲案】(遺産分割案)

共同相続人の一人が遺産の分割前に遺産に属する財産を処分したときは,当該処分をした財産については,遺産分割の時において遺産としてなお存在するものとみなす。

⑵ 【乙案】(償金請求案)

共同相続人の一人が遺産の分割前に遺産に属する財産を処分したときは,他の共同相続人は,当該処分をした者に対し,次のアに掲げる額から次のイに掲げる額を控除した額の償金を請求することができる。

ア 当該処分がなかった場合における民法第903条の規定によって算定された当該共同相続人の相続分に応じて遺産を取得したものとした場合の当該遺産の価額

イ 民法第903条の規定によって算定された当該共同相続人の相続分に応じて遺産を取得したものとした場合の当該遺産の価額

第4 遺留分制度に関する見直し

1 遺留分減殺請求権の効力及び法的性質の見直し

⑴ 遺留分侵害額の請求

民法第1031条の規律を次のように改めるものとする。

遺留分権利者及びその承継人は,〔遺留分権を行使することにより,〕受遺者(遺産分割方法の指定又は相続分の指定を受けた相続人を含む。以下第4において同じ。)又は受贈者に対し,遺留分侵害額に相当する金銭の支払を請求することができる(注1)(注2)。

(注1)この権利の行使により,具体的な金銭請求権が発生する。

(注2)遺留分権の行使により生ずる権利を金銭債権化することに伴い,遺贈や贈与の「減殺」を前提とした規定を逐次改めるなどの整備が必要となる。

⑵ 受遺者又は受贈者の負担額

民法第1033条から第1035条までの規律を次のように改めるものとする。

受遺者又は受贈者は,次のアからウまでの規律に従い,遺贈(遺産分割方法の指定又は相続分の指定による遺産の取得を含む。以下第4において同じ。)又は贈与(遺留分を算定するための財産の価額に算入されるものに限る。以下同じ。)の目的の価額(受遺者又は受贈者が相続人である場合にあっては,当該相続人の遺留分額を超過した額)を限度として,⑴の請求に係る債務を負担する。

ア 遺贈と贈与があるときは,受遺者が先に負担する。

イ 遺贈が複数あるとき,又は同時期の贈与があるときは,その目的の価額の割合に応じて負担する。ただし,遺言者がその遺言に別段の意思表示をしたときは,その意思に従う。

ウ 贈与が複数あるときは,後の贈与を受けた者から順次前の贈与を受けた者が負担する。

⑶ 受遺者又は受贈者の現物給付

次のとおり,金銭債務の全部又は一部の支払に代えて,受遺者又は受贈者が現物給付することができる旨の規律を設けるものとする。

ア 受遺者又は受贈者は,遺留分権利者に対し,⑵の規律により負担する債務の全部又は一部の支払に代えて,遺贈又は贈与の目的である財産のうちその指定する財産(以下「指定財産」という。)により給付することを請求することができる。

イ 〔アの請求は,遺留分侵害額の請求に係る訴訟の第一審又は控訴審の口頭弁論の終結の時までにしなければならない。〕

ウ アの請求があった場合には,その請求をした受遺者又は受贈者が負担する債務は,指定財産の価額の限度において(,その請求があった時に)消滅し,その指定財産に関する権利が移転する。

エ 遺留分権利者は,アの請求を受けた時から〔1か月〕〔2週間〕以内に,受遺者又は受贈者に対し,ウの指定財産に関する権利を放棄することができる。

オ 遺留分権利者がエの規定による放棄をしたときは,当初からウの指定財産に関する権利の移転はなかったものとみなす。