「法制審議会民法(相続関係)部会第22回会議資料22-1要綱案のたたき台⑴」の版間の差分

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(1 自筆証書遺言の方式緩和)
(第6 相続人以外の者の貢献を考慮するための方策)
 
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<p class="maru_num">② ①の規律にかかわらず,遺言者がその遺言に別段の意思を表示したときは,その意思に従うものとする。</p>
 
<p class="maru_num">② ①の規律にかかわらず,遺言者がその遺言に別段の意思を表示したときは,その意思に従うものとする。</p>
 
=====イ 遺産分割方法の指定がされた場合=====
 
=====イ 遺産分割方法の指定がされた場合=====
<p class="maru_num">① 遺言者が遺産分割方法の指定により遺産に属する特定の財産(引渡しを対抗要件とする動産を除く。)を相続人の一人又は数人に取得させる旨の遺言をした場合において,遺言執行者があるときは,遺言執行者は,その相続人が対抗要件を備えるために必要な行為をする権限を有するものとする。</p>
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<p class="maru_num" id="遺言者が遺産分割方法の指定により">① 遺言者が遺産分割方法の指定により遺産に属する特定の財産(引渡しを対抗要件とする動産を除く。)を相続人の一人又は数人に取得させる旨の遺言をした場合において,遺言執行者があるときは,遺言執行者は,その相続人が対抗要件を備えるために必要な行為をする権限を有するものとする。</p>
 
<p class="maru_num">② ①の財産が預貯金債権であるときは,遺言執行者は,預貯金の払戻し又は当該預金若しくは貯金に係る契約の解約の申入れをする権限を有するものとする。ただし,預金又は貯金に係る契約の解約の申入れは,①の財産が預貯金債権の全部であるときに限り,することができるものとする。</p>
 
<p class="maru_num">② ①の財産が預貯金債権であるときは,遺言執行者は,預貯金の払戻し又は当該預金若しくは貯金に係る契約の解約の申入れをする権限を有するものとする。ただし,預金又は貯金に係る契約の解約の申入れは,①の財産が預貯金債権の全部であるときに限り,することができるものとする。</p>
 
<p class="maru_num">③ ①及び②の規律にかかわらず,遺言者がその遺言に別段の意思を表示したときは,その意思に従うものとする。</p>
 
<p class="maru_num">③ ①及び②の規律にかかわらず,遺言者がその遺言に別段の意思を表示したときは,その意思に従うものとする。</p>
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====⑶ 遺言執行者の復任権====
 
====⑶ 遺言執行者の復任権====
 
<p class="maru_num">① 遺言執行者は,自己の責任で第三者にその任務を行わせることができるものとする。ただし,遺言者がその遺言に別段の意思表示をしたときは,その意思に従うものとする。</p>
 
<p class="maru_num">① 遺言執行者は,自己の責任で第三者にその任務を行わせることができるものとする。ただし,遺言者がその遺言に別段の意思表示をしたときは,その意思に従うものとする。</p>
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<p class="maru_num">② 〔①の請求は,遺留分侵害額の請求に係る訴訟の第一審又は控訴審の口頭弁論の終結の時までにしなければならないものとする。〕</p>
 
<p class="maru_num">② 〔①の請求は,遺留分侵害額の請求に係る訴訟の第一審又は控訴審の口頭弁論の終結の時までにしなければならないものとする。〕</p>
 
<p class="maru_num">③ ①の請求があった場合には,その請求をした受遺者等又は受贈者が負担する債務は,指定財産の価額の限度において(,その請求があった時に)消滅し,その指定財産に関する権利が移転するものとする。</p>
 
<p class="maru_num">③ ①の請求があった場合には,その請求をした受遺者等又は受贈者が負担する債務は,指定財産の価額の限度において(,その請求があった時に)消滅し,その指定財産に関する権利が移転するものとする。</p>
<p class="maru_num">④ 遺留分権利者は,①の請求を受けた時から〔1か月〕〔2週間〕以内に,受遺者等又は受贈者に対し,③の指定財産に関する権利を放棄することができるものとする。</p>
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<p class="maru_num" id="遺留分権利者は,①の請求を受けた時から">④ 遺留分権利者は,①の請求を受けた時から〔1か月〕〔2週間〕以内に,受遺者等又は受贈者に対し,③の指定財産に関する権利を放棄することができるものとする。</p>
 
<p class="maru_num">⑤ 遺留分権利者が④の規定による放棄をしたときは,当初から③の目的財産に関する権利の移転はなかったものとみなすものとする。</p>
 
<p class="maru_num">⑤ 遺留分権利者が④の規定による放棄をしたときは,当初から③の目的財産に関する権利の移転はなかったものとみなすものとする。</p>
  
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====⑵ 遺産分割の対象となる財産がある場合に関する規律====
 
====⑵ 遺産分割の対象となる財産がある場合に関する規律====
 
<p>遺産分割の対象財産がある場合(既に遺産分割が終了している場合も含む。)には,遺留分侵害額の算定をするに当たり,遺留分額から第903条の規定によって算定された遺留分権利者の相続分に応じて遺産を取得したものとした場合の当該遺産の価額を控除するものとする(注)。</p>
 
<p>遺産分割の対象財産がある場合(既に遺産分割が終了している場合も含む。)には,遺留分侵害額の算定をするに当たり,遺留分額から第903条の規定によって算定された遺留分権利者の相続分に応じて遺産を取得したものとした場合の当該遺産の価額を控除するものとする(注)。</p>
<p class="kakko_chu">(注)なお,この規律を明文化するに当たり,遺留分侵害額を求める以下の計算方法についても明文化するものとする。</p>
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<p class="kakko_chu" id="なお,この規律を明文化するに当たり">(注)なお,この規律を明文化するに当たり,遺留分侵害額を求める以下の計算方法についても明文化するものとする。</p>
 
<p class="kakko_chu">(計算式)</p>
 
<p class="kakko_chu">(計算式)</p>
 
<p class="kakko_chu">遺留分額=(遺留分を算定するための財産の価額)×(総体的遺留分率(民法第1028条の遺留分の割合))×(遺留分権利者の法定相続分の割合)</p>
 
<p class="kakko_chu">遺留分額=(遺留分を算定するための財産の価額)×(総体的遺留分率(民法第1028条の遺留分の割合))×(遺留分権利者の法定相続分の割合)</p>
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==第6 相続人以外の者の貢献を考慮するための方策==
 
==第6 相続人以外の者の貢献を考慮するための方策==
 
<p class="maru_num">① 被相続人に対して療養看護その他の労務の提供をし,これにより被相続人の財産の維持又は増加について特別の寄与をした者(〔三親等内の親族に限り,〕相続人,相続の放棄をした者,相続人の欠格事由に該当する者及び廃除された者を除く。以下「特別寄与者」という。)は,相続が開始した後,各相続人に対し,金銭の支払を請求することができるものとする。ただし,次に掲げる場合には,この限りでないものとする。</p>
 
<p class="maru_num">① 被相続人に対して療養看護その他の労務の提供をし,これにより被相続人の財産の維持又は増加について特別の寄与をした者(〔三親等内の親族に限り,〕相続人,相続の放棄をした者,相続人の欠格事由に該当する者及び廃除された者を除く。以下「特別寄与者」という。)は,相続が開始した後,各相続人に対し,金銭の支払を請求することができるものとする。ただし,次に掲げる場合には,この限りでないものとする。</p>
<p class="maru_kana">㋐ 特別寄与者がその寄与について対価を得たとき。</p>
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<p class="maru_kana" id="特別寄与者がその寄与について対価を得たとき">㋐ 特別寄与者がその寄与について対価を得たとき。</p>
 
<p class="maru_kana">㋑ 被相続人が遺言で別段の意思を表示したとき。</p>
 
<p class="maru_kana">㋑ 被相続人が遺言で別段の意思を表示したとき。</p>
 
<p class="maru_num">② ①の金銭の額について,特別寄与者と各相続人との間で協議が調わないとき,又は協議をすることができないときは,特別寄与者の請求により,家庭裁判所がこれを定めるものとする(注)。</p>
 
<p class="maru_num">② ①の金銭の額について,特別寄与者と各相続人との間で協議が調わないとき,又は協議をすることができないときは,特別寄与者の請求により,家庭裁判所がこれを定めるものとする(注)。</p>
<p class="maru_num">③ ②の場合には,家庭裁判所は,特別寄与者の寄与の時期,方法及び程度,相続財産の額その他一切の事情を考慮して,特別寄与者に支払うべき金銭の総額を算定し,これに各相続人の相続分を乗ずることにより,各相続人が支払うべき額(①の金銭の額)を算定するものとする。</p>
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<p class="maru_num" id="家庭裁判所は,特別寄与者の寄与の時期,方法及び程度">③ ②の場合には,家庭裁判所は,特別寄与者の寄与の時期,方法及び程度,相続財産の額その他一切の事情を考慮して,特別寄与者に支払うべき金銭の総額を算定し,これに各相続人の相続分を乗ずることにより,各相続人が支払うべき額(①の金銭の額)を算定するものとする。</p>
 
<p class="maru_num">④ ③の特別寄与者に支払うべき金銭の総額は,被相続人が相続開始の時において有した財産の価額から遺贈の価額を控除した残額を超えることができないものとする。</p>
 
<p class="maru_num">④ ③の特別寄与者に支払うべき金銭の総額は,被相続人が相続開始の時において有した財産の価額から遺贈の価額を控除した残額を超えることができないものとする。</p>
<p class="maru_num">⑤ ①の請求権は,相続開始を知った時から6箇月間行使しないときは,時効によって消滅するものとする。相続開始の時から1年を経過したときも,同様とするものとする。</p>
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<p class="maru_num" id="請求権は,相続開始を知った時から6箇月間">⑤ ①の請求権は,相続開始を知った時から6箇月間行使しないときは,時効によって消滅するものとする。相続開始の時から1年を経過したときも,同様とするものとする。</p>
 
<p class="kakko_chu">(注)②の請求に関する手続を整備するに当たっては,[http://law.e-gov.go.jp/htmldata/H23/H23HO052.html#1000000000000000000000000000000000000000000000019100000000002000000000000000000 家事事件手続法第191条第2項]([http://law.e-gov.go.jp/htmldata/H23/H23HO052.html#1000000000000000000000000000000000000000000000024500000000003000000000000000000 同法第245条第3項]において準用する場合を含む。)と同様の規律を設けるものとする。</p>
 
<p class="kakko_chu">(注)②の請求に関する手続を整備するに当たっては,[http://law.e-gov.go.jp/htmldata/H23/H23HO052.html#1000000000000000000000000000000000000000000000019100000000002000000000000000000 家事事件手続法第191条第2項]([http://law.e-gov.go.jp/htmldata/H23/H23HO052.html#1000000000000000000000000000000000000000000000024500000000003000000000000000000 同法第245条第3項]において準用する場合を含む。)と同様の規律を設けるものとする。</p>
  
  
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2017年7月31日 (月) 13:11時点における最新版

目次

第1 配偶者の居住権を保護するための方策

1 配偶者の居住権を短期的に保護するための方策

⑴ 居住建物について遺産分割が行われる場合の規律

ア 短期居住権の内容及び成立要件

配偶者は,相続開始の時に被相続人の建物を無償で使用していた場合(その建物の全部又は一部を居住の用に供していた場合に限る。)には,遺産の分割によりその建物の帰属が確定するまでの間,無償でその建物を使用することができるものとする(注1。以下では,この権利を「短期居住権」という。)。ただし,配偶者が遺贈又は死因贈与によりその建物について長期居住権(後記2)を取得した場合は,この限りでないものとする。

イ 短期居住権の効力

(ア) 用法遵守義務及び善管注意義務

配偶者は,従前の用法に従っての建物(以下1において「居住建物」という。)の使用をしなければならないものとする。

(イ) 必要費及び有益費の負担

① 配偶者は,居住建物の通常の必要費を負担するものとする。

② 配偶者が居住建物について通常の必要費以外の費用を支出したときは,他の相続人は,民法第196条の規定に従い,その相続分に応じて,その償還をしなければならないものとする。ただし,有益費については,裁判所は,他の相続人の請求により,その償還について相当の期限を許与することができるものとする。

(ウ) 短期居住権の譲渡及び賃貸等の制限

配偶者は,他の相続人の承諾を得なければ,第三者に居住建物の使用をさせることができないものとする。

(エ) 損害賠償及び費用の償還の請求権についての期間の制限

① (ア)又は(ウ)の規律に違反する使用によって生じた損害の賠償及び配偶者が支出した費用の償還は,居住建物が返還された時から1年以内に請求しなければならないものとする。

② ①の損害賠償の請求権については,居住建物が返還された時から1年を経過するまでの間は,時効は,完成しないものとする。

ウ 短期居住権の消滅

① 配偶者がイ(ア)又は(ウ)の規律に違反して使用をしたときは,他の相続人は,各自短期居住権の消滅を請求することができるものとする。

② 短期居住権は,その存続期間の満了前であっても,配偶者が居住建物の占有を喪失し,又は死亡したときは,消滅するものとする。

③ 配偶者は,短期居住権が消滅した場合(配偶者が長期居住権を取得した場合を除く。④から⑥までにおいても同じ。)には,居住建物の返還をしなければならないものとする。

④ 配偶者は,短期居住権が消滅した場合には,相続開始の後に居住建物に生じた損傷(通常の使用によって生じた損耗及び経年変化を除く。)を原状に復する義務を負うものとする。ただし,その損傷が配偶者の責めに帰することができない事由によるものであるときは,この限りでないものとする。

⑤ 配偶者は,短期居住権が消滅した場合には,相続開始の後に居住建物に附属させた物を収去する義務を負うものとする。ただし,居住建物から分離することができない物又は分離するのに過分の費用を要する物については,この限りでないものとする。

⑥ 配偶者の死亡により短期居住権が消滅した場合には,配偶者の相続人が④本文及び⑤本文の義務を負うものとする。

⑦ 配偶者は,相続開始の後に居住建物に附属させた物を収去することができるものとする。

⑵ 配偶者以外の者が無償で配偶者の居住建物を取得した場合の特則

① 配偶者は,相続開始の時に被相続人の建物を無償で使用していた場合(その建物の全部又は一部を居住の用に供していた場合に限る。)において,配偶者以外の者が遺言(遺贈,遺産分割方法の指定)又は死因贈与によりその建物の所有権を取得したときは,その建物の所有権を取得した者から明渡しの催告を受けた時から6か月を経過するまでの間は,無償でその建物を使用することができるものとする。

② 短期居住権の存続期間以外の規律は,に同じ(注2)

(注1)短期居住権によって受けた利益については,配偶者の具体的相続分からその価額を控除することを要しないものとする。

(注2)において他の相続人が負担することとされている必要費又は有益費の負担者や短期居住権の消滅請求権等の主体は,居住建物の所有権を有する者となる。

2 配偶者の居住権を長期的に保護するための方策

⑴ 長期居住権の内容及び成立要件

① 配偶者は,相続開始の時に被相続人の建物を使用していた場合(その建物の全部又は一部を居住の用に供していた場合に限る。)において,次に掲げるときは,終身の間又は一定の期間,その建物全部の使用及び収益をする権利(以下「長期居住権」という。)を取得するものとする()。

㋐ 遺産分割において配偶者に長期居住権を取得させる旨の協議が調い,又はその旨の審判が確定したとき。

㋑ 被相続人が配偶者に長期居住権を取得させる旨の遺贈をしたとき。

㋒ 被相続人と配偶者との間に,配偶者に長期居住権を取得させる旨の死因贈与契約があるとき。

② 裁判所は,次に掲げる場合に限り,①㋐の審判をすることができるものとする。

㋐ 配偶者に長期居住権を取得させることについて相続人全員の合意がある場合

㋑ 配偶者が長期居住権の取得を希望した場合であって,配偶者の生活を維持するために長期居住権を取得させることが特に必要と認められる場合

③ 長期居住権の設定行為(遺産分割協議若しくは審判,遺贈又は死因贈与契約)においては,その存続期間を定めなければならないものとする。

④ 遺贈又は死因贈与契約において長期居住権の存続期間を定めなかったときは,その存続期間を終身の間と定めたものとみなすものとする。

⑤ 民法第995条の規定は,長期居住権の遺贈の放棄については,適用しないものとする。

⑵ 長期居住権の効力

ア 用法遵守義務及び善管注意義務

配偶者は,従前の用法に従って⑴①の建物(以下2において「居住建物」という。)の使用及び収益をしなければならないものとする。

イ 必要費及び有益費の負担

① 居住建物の必要費は,配偶者が負担するものとする。

② 配偶者が居住建物について有益費を支出したときは,居住建物の所有者は,長期居住権が消滅した時に,その価格の増加が現存する場合に限り,その選択に従い,その支出した金額又は増価額を償還しなければならないものとする。ただし,裁判所は,居住建物の所有者の請求により,その償還について相当の期限を許与することができるものとする。

ウ 長期居住権の譲渡及び賃貸等の制限

配偶者は,居住建物の所有者の承諾を得なければ,長期居住権を譲り渡し,又は第三者に居住建物の使用又は収益をさせることができないものとする。

エ 第三者対抗要件

長期居住権は,これを登記したときは,居住建物について物権を取得した者その他の第三者に対抗することができるものとする。

オ 妨害排除請求権

配偶者は,エの登記を備えた場合において,次に掲げるときは,それぞれ次に定める請求をすることができるものとする。

㋐ 居住建物の占有を第三者が妨害しているとき その第三者に対する妨害の停止の請求

㋑ 居住建物を第三者が占有しているとき その第三者に対する返還の請求

カ 登記請求権

居住建物の所有者は,長期居住権者に対し,長期居住権の設定についての登記を備えさせる義務を負うものとする。

キ 損害賠償及び費用の償還の請求権についての期間の制限

① 又はの規律に違反する使用によって生じた損害の賠償及び配偶者が支出した費用の償還は,居住建物が返還された時から1年以内に請求しなければならない。

② ①の損害賠償の請求権については,居住建物が返還された時から1年を経過するまでの間は,時効は,完成しない。

⑶ 長期居住権の消滅

① 配偶者が⑵アの規律に違反した場合において,居住建物の所有者が相当の期間を定めてその違反を是正するよう催告をし,その期間内にその履行がないときは,居住建物の所有者は,長期居住権の消滅を請求することができるものとする。配偶者が⑵ウの規律に違反して使用又は収益をしたときも,同様とするものとする。

② 長期居住権は,その存続期間の満了前であっても,配偶者が死亡したときは,消滅するものとする。

③ 配偶者は,長期居住権が消滅した場合には,居住建物の返還をしなければならないものとする。

④ 配偶者は,長期居住権が消滅したときは,相続開始の後に居住建物に生じた損傷(通常の使用及び収益によって生じた損耗並びに経年変化を除く。)を原状に復する義務を負うものとする。ただし,その損傷が配偶者の責めに帰することができない事由によるものであるときは,この限りでないものとする。

⑤ 配偶者は,長期居住権が消滅したときは,相続開始の後に居住建物に附属させた物を収去する義務を負うものとする。ただし,居住建物から分離することができない物又は分離するのに過分の費用を要する物については,この限りでないものとする。

⑥ 配偶者の死亡により長期居住権が消滅した場合には,配偶者の相続人が④本文及び⑤本文の義務を負うものとする。

⑦ 配偶者は,相続開始の後に居住建物に附属させた物を収去することができるものとする。

(注)配偶者が長期居住権を取得した場合には,その財産的価値に相当する金額を相続したものと扱うものとする。

第2 遺産分割に関する見直し等

1 配偶者保護のための方策(持戻し免除の意思表示の推定規定)

婚姻期間が20年以上である夫婦の一方が他の一方に対し,その居住の用に供する建物又はその敷地(居住用不動産)の全部又は一部を遺贈又は贈与したとき(第1・2の規定により長期居住権を遺贈又は死因贈与した場合を含む。)は,民法第903条第3項の持戻しの免除の意思表示があったものと推定するものとする。

2 仮払い制度等の創設・要件明確化

⑴ 家事事件手続法の保全処分の要件を緩和する方策

家事事件手続法第200条第2項の規定にかかわらず,)家庭裁判所は,遺産の分割の審判又は調停の申立てがあった場合において,相続財産に属する債務の弁済,相続人の生活費の支弁その他の事情により遺産に属する預貯金債権を行使する必要があるときは,他の共同相続人の利益を害しない限り,当該申立てをした者又は相手方の申立てにより,遺産に属する特定の預貯金債権の全部又は一部を申立人に仮に取得させることができるものとする。

⑵ 家庭裁判所の判断を経ないで,預貯金の払戻しを認める方策

民法第898条第264条及び第251条の規定にかかわらず,)各共同相続人は,遺産に属する預貯金債権のうち,その相続開始時の債権額の2割にその相続人の法定相続分を乗じた額(ただし,預貯金債権の債務者ごとに100万円を限度とする。)については,単独でその権利を行使することができるものとする。〔この場合には,当該権利行使をした預貯金債権については,遺産分割の時において遺産としてなお存在するものとみなすものとする。〕

3 一部分割

① 共同相続人は,被相続人が遺言で禁じた場合を除き,いつでも,その協議で,遺産の全部又は一部の分割をすることができるものとする。

② 遺産の分割について,共同相続人間に協議が調わないとき,又は協議をすることができないときは,各共同相続人は,その全部又は一部の分割を家庭裁判所に請求することができるものとする。ただし,遺産の一部の分割をすることにより,共同相続人の一人又は数人の利益を害するおそれがあるときは,その請求をすることができないものとする。

4 相続開始後の共同相続人による財産処分

⑴ 【甲案】(遺産分割案・部会資料20における提案)

共同相続人の一人が,遺産の分割が終了するまでの間に,遺産の〔全部又は〕一部を処分した場合には,当該処分をした財産については,遺産分割の時において遺産としてなお存在するものとみなすものとする。

⑵ 【乙案】(償金請求案・新たな提案)

共同相続人の一人が,遺産の分割が終了するまでの間に,遺産の全部又は一部を処分した場合において,損失を受けた他の共同相続人は,当該処分をした者に対し,次のアに掲げる額から次のイに掲げる額を控除した額の償金を請求することができるものとする。

ア 当該処分がなかった場合における民法第903条の規定によって算定された当該共同相続人の相続分に応じて遺産を取得したものとした場合の当該遺産の価額

イ 民法第903条の規定によって算定された当該共同相続人の相続分に応じて遺産を取得したものとした場合の当該遺産の価額

第3 遺言制度に関する見直し

1 自筆証書遺言の方式緩和

① 自筆証書遺言においても,財産の特定に必要な事項については,自書によることを要しないものとする。

② ①の方法で遺言をした場合には,遺言者は,自書によらない部分がある全ての頁に署名し,かつ,これに印を押さなければならないものとする。

③ 自筆証書中の加除その他の変更は,①及び②の規律にかかわらず,財産の特定に必要な事項であっても,自書によらなければならないものとする。

2 自筆証書遺言の保管制度の創設

① 民法第968条第1項の方式による遺言をした者が法務局に対してその遺言書の原本の保管を委ねることができる制度を創設するものとする(注1)。

② ①による遺言書の保管のための手続(以下「遺言保管の手続」という。)は,遺言者本人が法務局に出頭してしなければ申請することができないものとする。

③ 遺言保管の手続をした遺言者は,法務局に対し,①により保管されている遺言書の原本の閲覧及びその写しの交付を求めることができるものとする。

④ 遺言保管の手続をした遺言者は,いつでも,法務局に対し,遺言書の原本の返還を求めることができるものとする。

⑤ 相続人,受遺者及び遺言執行者(以下「相続人等」という。)は,相続開始後に,法務局に対し,①による遺言書の保管の有無を照会することができるものとする。

⑥ 相続人等は,相続の開始後に,法務局に対し,①により保管されている遺言書の原本の閲覧及びその遺言書の正本の交付を求めることができるものとする(注2)。

⑦ ①により保管された遺言書については,民法第1004条第1項の規定は適用しないものとする。

⑧ 法務局は,⑤の照会がされた場合には,相続人等(⑤の照会をした者を除く。)に対し,遺言書を保管している旨を通知しなければならないものとする。

(注1)遺言書の原本を保管する際,法務局において遺言書の内容を画像データにしたものを別個に保管するものとし,仮に封緘された遺言書の保管の申請がされた場合には,画像データ作成のため,遺言者本人の了解を得てこれを開封することを想定している。また,④により法務局が遺言者に遺言書の原本を返還する場合には,前記画像データを消去することを想定している。

(注2)相続人等は,法務局に対し,遺言書の原本の交付を求めることはできないものとする。

3 遺贈の担保責任

① 遺言者が相続財産に属する物又は権利を遺贈の目的とした場合には,遺贈義務者は,相続が開始した時(その後に遺贈の目的である物又は権利を特定すべき場合にあっては,その特定の時)の状態で,その物若しくは権利を引き渡し,又は移転する義務を負うものとする。ただし,遺言者がその遺言に別段の意思を表示したときは,その意思に従うものとする。

② 民法第998条を削除するものとする。

4 遺言執行者の権限の明確化等

⑴ 遺言執行者の一般的な権限等

① 遺言執行者は,遺言の内容を実現することを職務とし,遺言の執行の妨害の排除その他の遺言の執行に必要な一切の行為をする権限を有するものとする。

② 遺言執行者がその権限内においてした行為の効果は相続人に帰属するものとする。

③ 遺言執行者が就職を承諾し,又は家庭裁判所に選任されたときは,その遺言執行者は,遅滞なくその旨及び遺言の内容を相続人に通知しなければならないものとする。

⑵ 個別の類型における権限の内容

ア 特定遺贈がされた場合

① 特定遺贈がされた場合において,遺言執行者があるときは,遺言執行者が遺贈の履行をする権限を有するものとする。

② ①の規律にかかわらず,遺言者がその遺言に別段の意思を表示したときは,その意思に従うものとする。

イ 遺産分割方法の指定がされた場合

① 遺言者が遺産分割方法の指定により遺産に属する特定の財産(引渡しを対抗要件とする動産を除く。)を相続人の一人又は数人に取得させる旨の遺言をした場合において,遺言執行者があるときは,遺言執行者は,その相続人が対抗要件を備えるために必要な行為をする権限を有するものとする。

② ①の財産が預貯金債権であるときは,遺言執行者は,預貯金の払戻し又は当該預金若しくは貯金に係る契約の解約の申入れをする権限を有するものとする。ただし,預金又は貯金に係る契約の解約の申入れは,①の財産が預貯金債権の全部であるときに限り,することができるものとする。

③ ①及び②の規律にかかわらず,遺言者がその遺言に別段の意思を表示したときは,その意思に従うものとする。

⑶ 遺言執行者の復任権

① 遺言執行者は,自己の責任で第三者にその任務を行わせることができるものとする。ただし,遺言者がその遺言に別段の意思表示をしたときは,その意思に従うものとする。

② ①の場合において,やむを得ない事由があるときは,相続人に対してその選任及び監督についての責任のみを負うものとする。

第4 遺留分制度に関する見直し

1 遺留分減殺請求権の効力及び法的性質の見直し

⑴ 遺留分侵害額の請求

遺留分権利者及びその承継人は,〔遺留分権を行使することにより,〕受遺者(遺産の分割の方法の指定又は相続分の指定を受けた相続人を含む。以下「受遺者等」という。)又は受贈者に対し,遺留分侵害額に相当する金銭の支払を請求することができるものとする(注)。

(注)この権利の行使により,具体的な金銭請求権が発生するものとする。

⑵ 受遺者等又は受贈者の負担額

受遺者等又は受贈者は,次の㋐から㋒までの規律に従い,遺贈(遺産の分割の方法の指定又は相続分の指定による遺産の取得を含む。以下「遺贈等」という。)又は贈与(遺留分を算定するための財産の価額に算入されるものに限る。以下同じ。)の目的の価額(受遺者等又は受贈者が相続人である場合にあっては,当該相続人の遺留分額を超過した額)を限度として,⑴の請求に係る債務を負担するものとする。

㋐ 遺贈等と贈与があるときは,受遺者等が先に負担する。

㋑ 遺贈等が複数あるとき,又は同時期の贈与があるときは,その目的の価額の割合に応じて負担する。ただし,遺言者がその遺言に別段の意思表示をしたときは,その意思に従う。

㋒ 贈与が複数あるときは,後の贈与を受けた者から順次前の贈与を受けた者が負担する。

⑶ 受遺者等又は受贈者の現物給付

① 受遺者等又は受贈者は,遺留分権利者に対し,の規律により負担する債務の全部又は一部の支払に代えて,遺贈等又は贈与の目的である財産のうちその指定する財産(以下「指定財産」という。)により給付することを請求することができるものとする。

② 〔①の請求は,遺留分侵害額の請求に係る訴訟の第一審又は控訴審の口頭弁論の終結の時までにしなければならないものとする。〕

③ ①の請求があった場合には,その請求をした受遺者等又は受贈者が負担する債務は,指定財産の価額の限度において(,その請求があった時に)消滅し,その指定財産に関する権利が移転するものとする。

④ 遺留分権利者は,①の請求を受けた時から〔1か月〕〔2週間〕以内に,受遺者等又は受贈者に対し,③の指定財産に関する権利を放棄することができるものとする。

⑤ 遺留分権利者が④の規定による放棄をしたときは,当初から③の目的財産に関する権利の移転はなかったものとみなすものとする。

2 遺留分の算定方法の見直し

⑴ 遺留分を算定するための財産の価額に関する規律

ア 相続人に対する生前贈与の範囲に関する規律

民法第1030条の規定にかかわらず,相続人に対する贈与は,相続開始前の10年間にされたものに限り,その価額を,遺留分を算定するための財産の価額に算入するものとする(注)。

(注)民法第1030条後段の規律は維持するものとする。

イ 負担付贈与に関する規律

負担付贈与については,その目的の価額から負担の価額を控除した額を,遺留分を算定するための財産の価額に算入するものとする。

ウ 不相当な対価による有償行為に関する規律

不相当な対価による有償行為については,当事者双方が遺留分権利者に損害を与えることを知ってしたものに限り,これを贈与とみなし,その目的の価額から対価を控除した額を,遺留分を算定するための財産の価額に算入するものとする(注)。

(注)民法第1039条後段の規律は削除するものとする。なお,「イ」及び「ウ」の規律は,1・⑵の受遺者等又は受贈者の負担額を算定する場合にも準用するものとする。

⑵ 遺産分割の対象となる財産がある場合に関する規律

遺産分割の対象財産がある場合(既に遺産分割が終了している場合も含む。)には,遺留分侵害額の算定をするに当たり,遺留分額から第903条の規定によって算定された遺留分権利者の相続分に応じて遺産を取得したものとした場合の当該遺産の価額を控除するものとする(注)。

(注)なお,この規律を明文化するに当たり,遺留分侵害額を求める以下の計算方法についても明文化するものとする。

(計算式)

遺留分額=(遺留分を算定するための財産の価額)×(総体的遺留分率(民法第1028条の遺留分の割合))×(遺留分権利者の法定相続分の割合)

遺留分侵害額=(遺留分額)-(遺留分権利者が受けた特別受益)-(遺産分割の対象財産がある場合(既に遺産分割が終了している場合も含む。)には具体的相続分に応じて遺産を取得したものとした場合の当該遺産の価額(ただし,寄与分による修正は考慮しない。))+(相続開始の時に被相続人が債務を有していた場合には,その債務のうち遺留分権利者が負担する債務の額)

3 遺留分侵害額の算定における債務の取扱いに関する見直し

① 1・⑴の請求を受けた受遺者等又は受贈者が遺留分権利者の負担する相続債務について免責的債務引受,弁済その他の債務を消滅させる行為をしたときは,その受遺者等又は受贈者は,その消滅した債務の額の限度において,1・⑵の規律により負担する債務の消滅を請求することができるものとする。

〔② ①の場合において,受遺者等又は受贈者が①の行為によって遺留分権利者に対して求償権を取得したときは,その求償権は,(①の請求をした時に,)①の規定により消滅した債務の額の限度において,消滅するものとする。〕

第5 相続の効力等(権利及び義務の承継等)に関する見直し

1 権利の承継に関する規律

⑴ 不動産又は動産に関する物権の承継

遺産分割(遺産分割方法の指定を含む。)又は相続分の指定による不動産又は動産に関する物権の承継は,民法第177条又は第178条の要件を備えなければ,第三者に対抗することができないものとする。

⑵ 債権の承継

① 遺産分割(遺産分割方法の指定を含む。)又は相続分の指定による債権の承継は,次の各号に掲げるいずれかの要件を備えなければ,債務者その他の第三者に対抗することができないものとする。

㋐ 相続人の全員が債務者に通知をしたこと。

㋑ その債権を承継した相続人〔又は遺言執行者〕が遺産分割又は遺言の内容を明らかにする書面を債務者に交付した日以後に債務者に通知をしたこと。

㋒ 債務者が承諾をしたこと。

② ①の通知又は承諾は,確定日付のある証書によってしなければ,債務者以外の第三者に対抗することができないものとする。

2 義務の承継に関する規律

民法第902条の規定にかかわらず,相続債権者は,各共同相続人に対し,その法定相続分の割合でその権利を行使することができるものとする。ただし,相続債権者が共同相続人の一人に対して指定相続分の割合による義務の承継を承認したときは,この限りでないものとする。

3 遺言執行者がある場合における相続人の行為の効力等

① 遺言執行者がある場合には,相続財産の処分その他相続人がした遺言の執行を妨げるべき行為は無効とするものとする。ただし,これをもって善意の第三者に対抗することができないものとする。

② ①本文の規律は,相続債権者〔又は相続人の債権者〕が相続財産についてその権利を行使することを妨げないものとする。

第6 相続人以外の者の貢献を考慮するための方策

① 被相続人に対して療養看護その他の労務の提供をし,これにより被相続人の財産の維持又は増加について特別の寄与をした者(〔三親等内の親族に限り,〕相続人,相続の放棄をした者,相続人の欠格事由に該当する者及び廃除された者を除く。以下「特別寄与者」という。)は,相続が開始した後,各相続人に対し,金銭の支払を請求することができるものとする。ただし,次に掲げる場合には,この限りでないものとする。

㋐ 特別寄与者がその寄与について対価を得たとき。

㋑ 被相続人が遺言で別段の意思を表示したとき。

② ①の金銭の額について,特別寄与者と各相続人との間で協議が調わないとき,又は協議をすることができないときは,特別寄与者の請求により,家庭裁判所がこれを定めるものとする(注)。

③ ②の場合には,家庭裁判所は,特別寄与者の寄与の時期,方法及び程度,相続財産の額その他一切の事情を考慮して,特別寄与者に支払うべき金銭の総額を算定し,これに各相続人の相続分を乗ずることにより,各相続人が支払うべき額(①の金銭の額)を算定するものとする。

④ ③の特別寄与者に支払うべき金銭の総額は,被相続人が相続開始の時において有した財産の価額から遺贈の価額を控除した残額を超えることができないものとする。

⑤ ①の請求権は,相続開始を知った時から6箇月間行使しないときは,時効によって消滅するものとする。相続開始の時から1年を経過したときも,同様とするものとする。

(注)②の請求に関する手続を整備するに当たっては,家事事件手続法第191条第2項同法第245条第3項において準用する場合を含む。)と同様の規律を設けるものとする。