所有者不明土地の利用の円滑化及び土地の所有者の効果的な探索に関する基本的な方針

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法務省 国土交通省 ○告示第二号

 所有者不明土地の利用の円滑化等に関する特別措置法(平成三十年法律第四十九号)第三条第一項の規定に基づき、所有者不明土地の利用の円滑化及び土地の所有者の効果的な探索に関する基本的な方針を次のように定めたので、同条第四項の規定に基づき公表する。

平成三十年十一月十五日

法務大臣山下貴司

国土交通大臣石井啓一

所有者不明土地の利用の円滑化及び土地の所有者の効果的な探索に関する基本的な方針

目次

第1 所有者不明土地の利用の円滑化等の意義及び基本的な方向

 我が国では人口減少に伴う土地利用ニーズの低下や地方から都市等への人口移動を背景とした、土地の所有意識の希薄化等により不動産登記簿では所有者の氏名や所在がわからない土地いわゆる「所有者不明土地」が全国的に増加している所有者不明土地の存在により公共事業用地の取得などの様々な場面において所有者の探索に多大な時間・費用・労力を要する場合や所有者不明土地の利用を可能とする現行制度の活用に当たり手続に時間を要する場合があり円滑な事業実施の大きな支障となっているまた公共的目的であってもそもそも所有者不明土地の利用を可能とする制度の適用対象とならず所有者不明土地を利用することができない場合もある更なる高齢者人口の増加が進む我が国の人口動態を踏まえれば今後大量の相続が発生する時期を迎える中で所有者不明土地が一層増加することが見込まれるためその対策は喫緊の課題となっている。

 このような状況において所有者不明土地の利用の円滑化及び土地の所有者の効果的な探索(以下「所有者不明土地の利用の円滑化等」という)を図るためには所有者の探索を合理化すること所有者不明土地の公共的目的のための円滑な利用を可能とすること所有者不明土地問題に直面する事業者や地方公共団体への支援を充実させること等が重要である。

 この基本方針はこのような認識の下「所有者不明土地の利用の円滑化等に関する特別措置法」(平成30年法律第49号以下「法」という)第3条第1項の規定に基づき所有者不明土地の利用の円滑化等を図るために必要な事項を定めるものである。

第2 所有者不明土地の利用の円滑化等のための施策に関する基本的な事項

 所有者不明土地の円滑な利用を可能とするためには所有者不明土地の利用の円滑化のための措置及び土地の所有者の効果的な探索のための措置を講ずる必要がある。

 そこで法では所有者不明土地の利用の円滑化のための措置として反対する権利者がおらず、現に建築物(簡易なものを除く)が存せず利用されていない所有者不明土地について公共的な事業のために一定期間の使用権を設定することを可能とする地域福利増進事業の創設公共事業における収用手続の合理化・円滑化を図る土地収用法の特例の措置を講ずるとともに所有者不明土地の適切な管理のため特に必要がある場合に地方公共団体の長等が家庭裁判所に対し財産管理人の選任等を請求することを可能とする民法の特例を講じているまた土地の所有者の効果的な探索のための措置として土地所有者等関連情報の利用及び提供長期間相続登記等がされていない土地について登記官が職権で長期相続登記等未了土地である旨等を登記に付記すること等を可能とする不動産登記法の特例を講じている。

1 所有者不明土地の定義

 所有者不明土地とは広義には登記簿からは所有者の氏名や所在が直ちに判明しない土地を指すことがあるが法における所有者不明土地は相当な努力が払われたと認められる方法により探索を行ってもなおその所有者の全部又は一部を確知することができない一筆の土地としている相当な努力が払われたと認められる探索の方法については土地の所有者を確知するために必要な情報(以下「土地所有者確知必要情報」という)を取得するため①土地の登記事項証明書の交付の請求②土地所有者確知必要情報を保有すると思料される者に対する土地所有者確知必要情報の提供の請求③土地の所有者と思料される者が記録されている書類を備えると思料される市町村の長又は登記所の登記官に対する土地所有者確知必要情報の提供の請求④土地の所有者と思料される者に対する所有者を特定するための書面の送付等をとることを定めている。

 これは土地収用法(昭和26年法律第219号)における探索に係る起業者が「過失がなくて土地所有者等を知ることができない」という基本的な考え方を変えるものではないが行うべき探索の方法を明確化・合理化することによりより効果的な探索を行うことを趣旨とするものである。

 なお②の請求に際しては法に定める土地所有者等関連情報の利用及び提供の仕組みを活用することが求められる他方これまで行われてきた地元精通者近隣住民海外の県人会等への照会や宛所不明での返信の際の最終住所地への訪問については多大な労力を要するにもかかわらず地縁の希薄化等を背景に情報を得られにくくなっていることや個人情報保護の観点を踏まえ合理的な範囲に限り行うものとするまた長期相続登記等未了土地については登記官による登記名義人となり得る者の探索の成果を活用することが有効である。

 また土地収用法の特例及び地域福利増進事業による使用権の設定の対象となる所有者不明土地は複雑な建築物の補償や営業補償を要さない土地すなわち現に建築物(簡易なものを除く)が存せずかつ業務の用その他の特別の用途に供されていない土地(以下「特定所有者不明土地」という)に限ることとしている。

2 地域福利増進事業

 所有者不明土地の利用に際しては不明者の権利を制約する可能性があることを踏まえると一定の公益性を有する事業である必要がある一方公益性が認められる公共的な事業は必ずしも土地収用法第3条各号に掲げるものに関する事業(以下「収用適格事業」という)に限られるわけではなく国及び地方公共団体以外の者が行う公園や広場の整備など地域住民等の福祉又は利便の増進を図るために行われる様々な事業が存在するところであるしかしこれまではこのような事業を行うために所有者不明土地を利用することはできなかった。

 このため法では公共的な事業のため一定期間の使用権を設定することを可能とする地域福利増進事業を創設することとしている地域福利増進事業は公的主体のみならず民間事業者NPO地域コミュニティ等の幅広い主体が事業主体となることから国は制度の普及啓発を図るとともに効果的かつ適切・円滑な運用のため事業の実施や公告裁定等の各種事務の実施に当たっての留意事項等を明らかにするガイドラインの整備先進事例のノウハウの共有等の情報提供等を行うことが求められる。

3 土地収用法の特例

 所有者不明土地を収用適格事業の用に供するためには土地収用法に基づき公益性等についての事業の認定を受けた後に収用委員会の裁決(いわゆる不明裁決)を経るという手法が用いられているしかし建築物が存せず利用されていない土地はその補償額の算定が容易であるにもかかわらず収用委員会の裁決を求めなければならないことや共有地について判明している権利者から積極的な反対がない場合であっても一人でも所有者が不明である場合には審理手続を行わなければならないことから手続に時間を要しているという課題があった。

 このため法では土地収用法の事業の認定を受けた収用適格事業について特定所有者不明土地を収用し又は使用しようとするときは収用委員会の裁決に代わり都道府県知事の裁定により審理手続を経ずに土地を取得できることとする土地収用法の特例を講ずることとしている。

 このように収用委員会に代わり都道府県知事が裁定を行う主体とされているため都道府県知事が起業者である場合都道府県知事が自ら特定所有者不明土地の収用等についての裁定を行うこととなる。したがって事業の公益性等については国土交通大臣による事業認定により担保されておりまた裁定の対象となる土地等の補償額については算定が容易なものに限られ収用委員会の意見も聴くこととされているところであるが裁定の透明性・公平性を向上させることが求められる。

 このため都道府県においては事業を実施する部署(裁定申請を行う部署)と裁定を行う部署を異なる部署とすることを基本とするまた裁定等について情報公開の請求があった場合には各都道府県の情報公開に関する条例に基づきこれらの処分に関する情報を適切に公開するものとする。

4 不在者の財産及び相続財産の管理に関する民法の特例

 民法(明治29年法律第89号)には不在者の財産又は相続財産の管理人を家庭裁判所が選任する制度があるがその選任の請求をすることができるのは利害関係人又は検察官とされている(同法第25条第1項及び第952条第1項)。

 しかし例えばごみの不法投棄や雑草の繁茂等により所有者不明土地が周辺に悪影響を与えている場合など所有者不明土地を適切に管理する必要性が高い場合に地方公共団体が利害関係人として財産管理人の選任請求をすることができるかどうかは必ずしも明らかではなかった。

 このため法では国の行政機関の長又は地方公共団体の長(以下「国の行政機関の長等」という)が所有者不明土地の適切な管理のために特に必要があると認める場合に財産管理人の選任の請求を行うことができることとしている。

 国の行政機関の長等は必要に応じ本制度を活用して所有者不明土地の適切な管理を図るものとする。

5 土地所有者等関連情報の利用及び提供

 所有者の探索においては不動産登記簿以外にも固定資産課税台帳などの有効な情報源が存在するがこれまでは公共的な事業のためであっても原則として活用することはできず効果的な探索を行うことができなかった。

 このため法では都道府県知事及び市町村長は地域福利増進事業収用適格事業又は都市計画事業(以下「地域福利増進事業等」という)の実施の準備のためその事業区域内の土地所有者等を知る必要があるときは土地所有者等関連情報を内部で利用することができることとしている。

 また都道府県知事及び市町村長は地域福利増進事業等を実施しようとする者からその準備のため事業区域内の土地所有者等を知る必要があるとして土地所有者等関連情報の提供の求めがあったときは情報を提供するものとしているただし国及び地方公共団体以外の者に対し情報を提供しようとするときは本人の同意を得なければならないことに留意が必要である加えて国の行政機関の長等は地域福利増進事業等の実施の準備のためその事業区域内の土地所有者等を知る必要があるときは土地に工作物を設置している者等に対し土地所有者等関連情報の提供を求めることができることとしている。

 情報の提供の求めを受けた都道府県知事又は市町村長は土地の所有者の効果的な探索を図るとの法の趣旨を踏まえつつその必要性を判断した上で情報を提供するものとし情報の提供の求めを受けた工作物の設置者等は情報の提供の求めに応じるよう努めるものとするまた土地所有者等関連情報を利用する者及び土地所有者等関連情報の提供を受けた者は個人情報保護関係法令の規定に基づき情報を適正に取り扱うものとする。

6 特定登記未了土地の相続登記等に関する不動産登記法の特例

 所有者不明土地問題の要因の一つとして相続登記が未了のまま放置されている土地が少なからず存在することが指摘されている特に所有権の登記名義人の死亡後長期間にわたり相続登記が未了のまま放置され数次にわたって相続が発生している土地については所有者の探索に多大な時間・費用・労力を要することとなる所有者の効果的な探索のためにはこのような状態にある土地を解消するとともに今後相続登記が未了のまま放置されることを防止することが重要である。

 このため法では特定登記未了土地の相続登記等に関する不動産登記法の特例として登記官が所有権の登記名義人となり得る者を探索した上で職権で長期間にわたり相続登記等がされていない土地である旨等を登記に付記すること等を行うとともに所有権の登記名義人となり得る者に対して相続登記等の申請を促し所有者の効果的な探索を図るものとする。

7 その他

(地方公共団体に対する支援)

 地方公共団体においては用地取得事務に関する専門的な知識を有している職員の不足が課題となっている。

 このため法では地方公共団体の長は地域福利増進事業等の実施の準備のためその職員に土地所有者等の探索に関する専門的な知識を習得させる必要があるときは国土交通大臣に対し国土交通省職員の派遣を要請することができることとしているまた要請を受けた国土交通大臣は業務遂行に著しい支障のない限り適任と認める職員を派遣するよう努めることとしている。

 国は法に定める職員の派遣や地方公共団体職員向けの講習等の実施を通じ用地取得事務に関する専門的な知識を提供するものとする。

 また国は法の施行事務及び地方公共団体が行う用地業務等の円滑化を図るため沖縄総合事務局地方整備局及び北海道開発局(以下「地方整備局等」という)の管轄区域毎に地方整備局等法務局地方公共団体関係団体等を構成員とする地方協議会を設置し制度の周知各地方公共団体における取組や先進事例の情報共有関係団体を始めとする有識者の知見の活用相談窓口の設置等を行うものとする。

(地方公共団体による支援)

 地域福利増進事業は事業主体を公的主体に限定しておらず民間事業者NPO地域コミュニティ等の幅広い主体が事業主体となることが可能であるしかしこれらの主体は所有者の探索や補償金の見積り等に関するノウハウを有していない場合が想定されることから適切な支援を行うことが重要である。

 このため法では地方公共団体は地域福利増進事業を実施しようとする者など所有者不明土地を使用しようとする者の求めに応じ所有者不明土地の使用の方法に関する提案土地の権利関係又は評価について特別の知識経験を有する者のあっせん等の援助を行うよう努めるものとしている。

 地方公共団体は地方協議会の枠組み等を活用し国の支援や関係団体の協力も得ながら所有者不明土地を使用しようとする者の援助を行うよう努めるものとする。

第3 特定所有者不明土地を使用する地域福利増進事業に関する基本的な事項

 地域福利増進事業に関する基本的な事項は以下に定めるとおりであるが詳細な運用指針については別途定めるガイドラインによるものとする。

1 地域福利増進事業の対象

 地域福利増進事業の対象となる事業は法第2条第3項において限定されている。

 このうち同項第8号では購買施設教養文化施設その他の施設で地域住民その他の者の共同の福祉又は利便の増進に資するものとして政令で定めるものの整備に関する事業であって被災市町村の区域又は周辺の地域において当該施設と同種の施設が著しく不足している区域において行われるものが定められている「周辺の地域」の範囲については整備される施設の種類規模等に応じ地理的条件交通条件等を考慮し裁定の申請を受けた都道府県知事が関係市町村長の意見を聴取した上で判断することが望ましいまた「著しく不足している」かどうかについては周辺の地域において同種の施設が存在しないことを基本とするものとする。

2 裁定申請に当たっての留意事項

(裁定申請書の記載事項)

 裁定申請書には①事業者の氏名又は名称及び住所②事業の種別(法第2条第3項各号に掲げる事業の別)③事業区域④裁定申請をする理由⑤土地使用権の目的となる特定所有者不明土地の所在地番地目及び地積⑥特定所有者不明土地の所有者の全部又は一部を確知することができない事情⑦土地使用権等の始期⑧土地等使用権の存続期間を記載することとされているがその内容は以下を満たすことが求められる。

・事業区域

 土地の適正かつ合理的な利用に寄与するという観点から事業区域に特定所有者不明土地以外の土地が存在する場合も含め事業に真に必要となる区域が適切に設定されているものであること。

・裁定申請をする理由

 当該事業を実施することにより地域住民等の福祉又は利便の増進がどのように図られることになるかが具体的に記載されており事業の公益性や必要性の判断ができるものであること。

・特定所有者不明土地の所有者の全部又は一部を確知することができない事情

 法第2条第1項に定める探索の方法をどのように実施したかが具体的に記載されたものであること。

(事業計画書の記載事項)

 裁定申請書に添付する事業計画書には①事業により整備する施設の種類位置規模構造及び利用条件②事業区域③事業区域内にある特定所有者不明土地以外の土地等に関する権利の取得に関する計画(以下「権利取得計画」という。)④資金計画⑤土地等使用権の存続期間の満了後に特定所有者不明土地を原状に回復するための措置の内容等を記載することとされているがその内容は以下を満たすことが求められる。

・事業により整備する施設の種類

 法第2条第3項に掲げる事業の別ではなく事業により整備される具体的な施設が記載されたものであること。

・事業により整備する施設の利用条件

 施設の利用者を限定したり施設の利用料を徴収する場合にあってはその内容が具体的に記載されたものであること。

・権利取得計画

 事業区域内にある土地で特定所有者不明土地以外のもの及び当該土地にある物件に関する所有権その他の権利についてその取得状況取得の見込み又は権利者との調整状況が具体的に記載されたものであること。

・資金計画

 施設の整備及び運営並びに土地等使用権の存続期間満了後の土地の原状回復措置に要する資金について適切に調達できる見込みが具体的に記載されたものであること

・原状回復措置の内容

 特定所有者不明土地及び当該特定所有者不明土地にある物件の申請時の状況が具体的に記載されており整備する施設取得することとしている物件所有権等に照らしてとるべき措置の内容が具体的に記載されたものであること。

(補償金額見積書の記載事項)

 裁定申請書に添付する補償金額見積書には①特定所有者不明土地の面積②特定所有者不明土地にある所有者不明物件の種類及び数量③特定所有者不明土地等の確知所有者の全部の氏名又は名称及び住所④特定所有者不明土地等の確知権利者の全部の氏名又は名称及び住所並びにその権利の種類及び内容⑤特定所有者不明土地所有者等が受ける損失の補償金の見積額及びその内訳を記載することとされているがその内容は以下を満たすことが求められる。

・特定所有者不明土地の面積

 実地における測量に基づいた値等正確な面積であることが示されたものであること。

・損失の補償金の見積額及びその内訳

 補償金の見積額について近傍類似の土地の借賃等を考慮した額として適切な額であることが示されたものであること。

・特定所有者不明土地等の確知所有者の全部の氏名及び住所

 補償金額見積書が縦覧に供されることにより確知所有者の氏名及び住所が明らかになることに鑑み確知所有者が暴力行為等の被害を受ける可能性のある者である場合にはその情報の取り扱いに配慮するものとする。

・特定所有者不明土地等の確知権利者の全部の氏名及び住所

 補償金額見積書が縦覧に供されることにより確知権利者の氏名及び住所が明らかになることに鑑み確知権利者が暴力行為等の被害を受ける可能性のある者である場合にはその情報の取り扱いに配慮するものとする。

(住民の意見を反映させるために必要な措置)

 地域福利増進事業は地域住民等の共同の福祉又は利便の増進を図るために行われるものであることから公益性を有する事業であることに加え地域住民の意見が反映されたものであることが望ましいこのため実施される事業については一定の公益性を有するのみならず地域住民の意見が適切に反映されていることが重要である。

 そこで事業者は裁定申請に当たり住民の意見を反映させるために必要な協議会の開催等の措置を講ずるときは事業の実施により影響が及ぶ範囲等を考慮しその対象等を適切に設定するものとする。

3 公告・縦覧及び裁定に当たっての留意事項

(公告前に行う要件の確認に当たっての留意事項)

 都道府県知事は裁定申請があったとき当該裁定申請に係る事業が法第11条第1項各号に掲げる要件に該当するかどうかを確認するに当たっては以下の事項に留意するものとする。

① 土地等使用権の存続期間については10年を限度としまた事業内容に応じ適切なものであること。

② 利用条件については地域福利増進事業が地域住民等の共同の福祉又は利便の増進を図るためのものであることに鑑み利用者を特定の者に不当に限定したり特定の利用者を差別的に扱うものでないことまた施設の利用に当たり利用料を徴収する場合にあってはその額が合理的なものであること。

③ 原状回復措置については土地等使用権の存続期間の満了後に原則として更地に復す計画となっていること原状回復措置が適正かつ確実に行われる見込みについては原状回復措置の内容に応じて合理的に判断すること。

④ 事業を遂行する十分な意思と能力については事業の施行について許認可等を必要とする場合にはその処分を受けている又は受ける見込みがあることまた事業者の組織及び人員からみて事業の実施に必要な体制が整えられていること。

⑤ その他特定所有者不明土地及び当該特定所有者不明土地にある物件の権利者について相当な努力が払われたと認められる方法により探索が行われていること事業者が住民の意見を反映するために必要な措置を適切に講じていること多くの住民が事業に反対していないこと及び事業者(法人にあってはその役員)が暴力団員又は暴力団員でなくなった日から5年を経過しない者でないこと。

(縦覧手続に当たっての留意事項)

 都道府県知事は補償金額見積書を縦覧に供するに当たっては確知所有者及び確知権利者の氏名及び住所が明らかになることに鑑み確知所有者又は確知権利者が暴力行為等の被害を受ける可能性のある者である場合にはその情報の取り扱いに配慮するものとする。

(その他)

 地域福利増進事業においては都道府県知事が事業者となる場合都道府県知事が自ら公告前に要件の確認を行い土地使用権等の取得についての裁定を行うこととなるしたがって事業の公益性については関係市町村長の意見聴取によっても担保されまた裁定の対象となる土地等の補償額については算定が容易なものに限られ収用委員会の意見も聴くこととされているところであるがそれらの透明性・公平性を向上させることが求められる。

 このため都道府県においては事業を実施する部署(裁定申請を行う部署)と当該裁定申請に係る要件確認・裁定を行う部署を異なる部署とすることを基本とするまた要件確認・裁定について情報公開の請求があった場合には各都道府県の情報公開に関する条例に基づきこれらの処分に関する情報を適切に公開するものとする。

4 裁定後の留意事項

(土地等使用権の存続期間の延長)

 地域福利増進事業を実施している土地使用権等を取得した事業者(以下「使用権者」という。)が土地等使用権の存続期間の満了後も引き続き事業を実施しようとするときは土地等使用権の存続期間の延長についての裁定を申請することができることとしている。

 土地等使用権の存続期間の延長についての裁定申請及び裁定に当たっては土地等使用権の存続期間中所有者不明土地に関する権利について変動が生じたり権利者の意向に変化が生じている可能性があることから土地所有者等の探索反対する権利者の有無の確認等を改めて行う必要がある。

 このため使用権者は相当な努力が払われたと認められる方法により改めて土地所有者等の探索を行うものとし都道府県知事は公告及び縦覧等の手続を通じて裁定申請に係る使用権設定土地について事業計画等について異議を有する権利者がいないことの確認当該使用権設定土地と併せて地域福利増進事業に供している土地がある場合にあっては当該土地に係る賃借契約等が適切に延長されることの確認等を改めて行うものとする。

 また延長後の存続期間については延長前の存続期間にかかわらず改めて当該地域福利増進事業の実施のために必要な期間を定めるものとする。

(都道府県による監督の在り方)

 地域福利増進事業は土地等使用権の存続期間にわたり裁定申請に係る事業計画に従って適切に実施されることが求められる。

 このため都道府県知事は定期的に使用権者に対し事業に関する報告を求めるとともに必要に応じてその職員による立入検査等を実施することで事業が適切に実施されているかどうかを把握するよう努めるものとする裁定申請に係る事業計画に従って事業を実施していないと認められるときなど法第23条第1項各号に掲げる裁定の取消事由に該当することとなったときは速やかに裁定の取消しを検討するものとする。

第4 特定登記未了土地の相続登記等の促進に関する基本的な事項

1 特定登記未了土地の相続登記等に関する不動産登記法の特例

 法第2条第4項に規定する「公共の利益となる事業」には同項において例示されている収用適格事業にとどまらず同条第3項に規定する地域福利増進事業や土地区画整理法(昭和29年法律第119号)による土地区画整理事業等のまちづくりに関する事業のほか防災・減災に資する事業など広く公共の利益となる事業が含まれる。

 登記官はこのような公共の利益となる事業を実施しようとする地方公共団体等からの求めに応じあらかじめ所有権の登記名義人となり得る者(法定相続人等)を探索しておくことによって区域の適切な選定を始め当該事業の円滑な遂行を図ることができるものについて事業の公共性・緊急性や所有者把握の困難性等を考慮し優先順位が高いものから法第40条に基づき当該土地の所有権の登記名義人となり得る者の探索をするものとする。

 登記官は当該探索により当該土地の所有権の登記名義人となり得る者を知ったときはその者に対して相続登記等の必要性やその手続の方法を説明する等して相続登記の促進に取り組むものとする。

2 登録免許税の特例措置

 相続により土地の所有権を取得した者が当該土地の所有権の移転の登記を受ける前に死亡した場合において平成30年4月1日から一定の期間内にその死亡した者を当該土地の所有権の登記名義人とするために受ける登記については租税特別措置法(昭和32年法律第26号)に基づき登録免許税の免税措置を受けることができるものとされている。

 また個人が法の施行の日から一定の期間内に市街化区域外の土地で市町村の行政目的のため相続による土地の所有権の移転の登記の促進を特に図る必要があるものとして法務大臣が指定する土地について相続による所有権の移転の登記を受ける場合は租税特別措置法及び租税特別措置法施行令(昭和32年政令第43号)に基づき当該登記に対する登録免許税の免税措置を受けることができるものとされている。

 相続登記が未了のまま放置されれば所有者不明土地となってしまい公共事業の円滑な実施や農地の集約化のみならず空き地対策空き家対策地域活性化など市町村の様々な行政目的の円滑な実施に悪影響を与えることから幅広い土地を対象に相続登記の促進を図るため登録免許税の免税措置に係る法務大臣による指定は市町村からの申出を最大限に尊重して行うものとする。

3 その他相続登記等の促進に関する取組

 国は今後大量の相続が発生する時期を迎えようとする中で上記の取組を始めとして相続登記の重要性・必要性について広く国民の理解を深めるよう努めるものとする。

 そのために国は法定相続情報証明制度及び法務局による自筆証書遺言の保管制度を始めとした他の相続登記の促進に関する取組と併せて相続登記の促進に関する積極的な周知・広報に地方公共団体やその他の関係機関と連携して取り組むものとする。

第5 その他所有者不明土地の利用の円滑化等に関する重要事項

 所有者不明土地問題は我が国の特定の地域における課題ではなく都市部・地方部の別なく様々な土地において生じている課題であることまた多様な行政分野と関連し関係する行政機関等も多岐にわたることから関係省庁地方公共団体関係団体等が密接に連携することが必要であるこのため国土交通省法務省を始めとする関係省庁は「所有者不明土地等対策の推進に関する基本方針」(平成30年6月1日所有者不明土地等対策のための関係閣僚会議決定)を踏まえつつ政府一体となってその対策に当たるものとするまた国は地方協議会の設置等により各行政機関や関係団体が果たすべき役割の確認積極的な意見交換や情報共有関係士業団体との連携等を行うことを通じ地方公共団体に対する支援を実施するものとし地方公共団体は法第5条の趣旨も鑑み地域の実情に応じた施策の充実に努めるものとする。

 その上で国は法附則第2項の規定に基づき法律の施行後3年を経過した場合において法の施行の状況について検討を加え必要があると認めるときはその結果に基づいて必要な措置を講ずるものとする。